日系農家の海岸気候を活かした農業2018年12月10日 12:21

春田さんと久保さん(右から)
 北東ブラジル(ノルデステ)のペルナンブコ州ボニート市の日系農家は、海岸の気候や高所を活かした農業を展開しています。戦後移住者の久保洋深さん(79、広島)と、春田秀夫さん(77、石川)の二人が、同地の気候特性に合わせた農業を展開し、牽引しています。

 集団移住による日本人農家のリオ・ボニート移住地入植は、1958年の開拓に始まりました。開拓後は、売れる農産物を求めて試行錯誤し、やっとバラや菊の栽培にたどり着きました。日本から持ち込んだカブや白菜など市場に出ていなかった野菜も栽培、今では州都レシフェ市、近郊のボニート市の市場活性化に貢献しています。

 同地の農業を牽引する久保さん、春田さんは、サンパウロ州アチバイアにあるコチア産業組合の農業試験場勤務中に知り合い、ボニート市近郊に移住、同地の気候条件に合わせた農業を行っています。

 久保さんが最初に同地を訪れたのは試験場を辞めた1965年頃で、バタタ(ジャガイモ)栽培ができるかどうかの視察でした。ここには熱帯特有の青枯病、 南幅(なんぷく)病があり、バタタ栽培には向かないことが判りました。同地では、海岸線からの距離で気候が変わり、雨量や高低差を活かした栽培方法です。海岸線から内陸に100km先辺りまでがゾーナ・ダ・マッタ(森林地帯、年間雨量1200~2000mm)と呼ばれ、日系農家土地はここにあります。久保さんは試行錯誤の後、森林地帯の気候を活かしバラの栽培に成功しました。

 春田さんは、土地が海抜700m近い高地にあり、高低差や傾斜地で機械化できないため、人海戦術で約10種類の農作物を生産しています。この土地では、風下から植えることで、風が病気を運ぶのを防止できるそうです。農業用水は、雨期に降った雨を溜めた池の水を利用しています。最近はエル・ニーニョ現象で雨が少なく、水量が不十分で不作が続いているとか。

 現在、同地の日系農家は数軒のみですが、各農家は常に新しい農作物の栽培に挑戦するなど、ブラジル人農家のお手本になっています。<写真>サンパウロ新聞