サンパウロの水道民営化、前途は多難2023年12月07日 12:55

 ブラジルのメディアによると、サンパウロ州議会は6日、Sabesp(サンパウロ州基礎衛生会社)の民営化を承認しました。この日州議会は大荒れとなり、警察が会議場内に唐辛子スプレーを投げ込むなどして騒ぎを鎮め、野党議員退席後に採決が行われました。承認には出席議員の単純過半数の賛成でよく、投票は賛成62票、反対1票で可決されました。

 議会の傍聴席には民営化反対者が大勢押しかけデモをするなど騒ぎになり、議論が中断し、議長は警察を導入して騒ぎを収めました。この後、野党議員が退席した中で採決が行われ承認されました。野党は、採決は違憲として最高裁に上告する予定です。

 Sabespはサンパウロ州が50.3%を出資するする世界最大級の衛生設備企業で、31億2000万レアルの利益を計上しています。サンパウロ州内の2,840万人(サンパウロ州の375自治体)に上下水道のサービスを提供し、収益の半数以上を占めるのがサンパウロ市の事業です。

 今回の民営化は保有株式(サンパウロ証券取引所とニューヨーク証券取引所に上場、推定市場価値は390億レアル)を売却するもので、上下水道事業の民営化を行おうとするものです。

 同社の民営化には異論も多く、州議会では異常な形で承認されましたが、同社の収益の半数以上を占めるサンパウロ市議会の承認が必要なため、このまますんなりと収まりそうもありません。

 同市の法律で、Sabespの株式保有管理に変更があった場合、サンパウロ市は再び市内の上下水道サービスを引き継ぐことになっており、市議会で民営化が承認されなければ。サンパウロ市での水道事業はabespの事業から除外されることになります。こうなると民間企業にとって、Sabespの魅力は半減します。

 今回の州議会での民営化法案の承認については、野党のみならず行政の専門家も疑問を表明しています。サンパウロ大学のグスタボ・オリベイラ教授(行政法)は、「投票プロセスは違憲だ」と指摘します。サンパウロ州憲法は、基本的な衛生サービスは州の管理下にある会社によって提供されなければならないとあり、州憲法の条文を変更する必要があるといいます。

同教授は「Sabespは、国内で最も人口の多い州の衛生部門にとって不可欠な企業であり、性急な民営化は逆効果になる可能性がある」と話しています。