ブラジル望遠

　サンパウロ裁判所は母親と胎児へのリスクを理由に、五つ子を妊娠した女性に対し、胎児の一部を中絶することを認めました。ブラジルのメディアによると、ブラジルでは母親にリスクがある場合にが中絶が認められていますが、連邦医学評議会は「胎児の減胎」を禁止しています。裁判所が28日に出した判決は減胎を認めるものでした。

　裁判官は「科学的には五つ子の妊娠が完全に成功するとは証明されていない。部分的中絶は残される胎児には生きる希望だ」と判決理由を述べています。また、判決では5胎児のうち2胎児を残すように指摘しています。サンパウロ裁判所は、これまでに前例のない事件としています。

　五つ子を妊娠した妊婦を診察した医療専門家の1人は「早産で生まれる可能性が高い胎児と大きなお腹の張りを抱える妊婦の両方にとって死亡のリスクが高い」と警告し、「子宮の損傷は出産時の制御不能な出血につながる可能性がある」と指摘しています。判決はそうした点も考慮されたと思われます。ブラジルの法律は、強姦の結果妊娠した場合、妊婦の生命に危険がある場合、胎児性無脳症と診断された場合に中絶を認めています。

　連邦医学評議会は2022年、生殖補助医療（体外受精など）による多胎妊娠の場合の減胎処置を禁止を決議しました。さらに2024年、医師は中絶を行ったとして行政および司法手続きが必要と決議しました。連邦最高裁判所は、2024年の決議の有効性とそれに基づく医師に対する訴訟手続きを停止しましたが、この決定でも減胎処置の完全解決にはなっていません。